嵐とリンゴ
嵐が近づいてくる。
リンゴ園を営む青年は、
気が気でなかった。
暴風雨が吹き募る。
丹精こめて育てたリンゴが、
相次ぎ吹き落とされていく……。
胸が張り裂けそうになった。
やがて、青年は気が付く。
同じ木になっているリンゴでも、
わけなく落ちるリンゴと、
なかなか落ちないリンゴがある。
彼は、はっとした。
台風は毎年来る。
それを覚悟せずにリンゴ園を経営するのは、
天に甘えているに等しい。
嵐が吹いても、落ちないリンゴを作ろう!
青年は新たな意欲で、営農に取り組む。
吹き落とされたリンゴは“被害”と思わず、
逆に天の特別の“たまもの”と感ずるようになった。
落ちたリンゴはジャム工場に売り、
その収益は社会のために使っている。
東北の一青年のそんなエピソードを紹介しながら、
作家の下村湖人は書いている。
「非運に処する最上の道は、
なんといっても、
非運の中に天意を見いだして
それに感謝することでなければなりません」
勉強でもスポーツでもなんだって気持ち一つで真逆の方向へ向かう。
ピンチはチャンス、だからピンチに感謝。