変毒為薬
「もしも目が見えるようになる手術があったら受けますか?」
視覚障害者柔道のパラリンピック元日本代表で実業家の初瀬勇輔氏は
青少年を励ます講演会の席上参加者にそう問われ、言葉に詰まったことがある。
23歳の時、緑内障で失明した。
人生に絶望したものの、周囲の支えを励みに前を向いた。
就職活動では100社以上で不採用になったが、
人材派遣会社の特例子会社に入社した。
特例子会社とは、障害者の雇用に特別な配慮をし、
障害者の雇用の促進等に関する法律第44条の規定により、
一定の要件を満たした上で厚生労働大臣の認可を受けて、
障害者雇用率の算定において親会社の一事業所と見なされる子会社である。
そこで経験を積み障害者の人材紹介会社を起業した。
障害者と健常者をつなぐ架け橋となってきた。
失明した直後なら、冒頭の問いに手術すると即答していた。
しかし視力を失ってから歩んできた人生が
いかに充実していたかということに改めて気づいたのだ。
初瀬氏は、「今は楽しくて仕方がない」と語っている。
思いもかけずに襲いかかってきた試練に
勇気を奮い起こして立ち向かっていくのか
それとも悲しみに暮れたり、なぜ自分だけと恨んでみたり
またはどうせ自分なんてと投げやりになってみたりするのか
苦難の中で重ねた挑戦の日々は
より強くより大きな自分へと飛躍させてくれる。
そして、気づけば
試練が楽しいものかけがえのいないものへと変化していることに気付くのだ。
失明という絶望的な状況を
楽しくて仕方ないものへと変化させることができるのならば、
受験とか進路選びなどはなおさらであろう。
すべては勇気をもって一歩前に出る気持ちから始まる。