勝敗
野球界の重鎮である野村克也氏は、
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
と述べています。
すなわち、負けるときは負けるべくして負けているというわけです。
この言葉はもともと、江戸時代の大名で剣術の達人でもあった
松浦静山の剣術書『常静子剣談』にある一文から引用されたものです。
「負けるときには、何の理由もなく負けるわけではなく、
その試合中に必ず何か負ける要素がある。
一方、勝ったときでも、すべてが良いと思って慢心すべきではない。
勝った場合でも何か負けにつながったかもしれない要素ある」
という意味です。
試合に勝つためには、負ける要素が何だったかを抽出し、
どうしたらその要素を消せるかを考えていく必要がある。
また、もし勝ち試合であっても、
その中には負けにつながることを犯している可能性があり、
その場合は、たとえ試合に勝ったからといって、
その犯したことを看過してはならない、
という戒めを述べているのです。
これは入試の世界でも全く同じではないでしょうか。
いわゆる「合格体験談」つまり成功事例を教えてくれるものは多いのですが、
実際にはむしろ失敗から多くのことが学べるものです。
例えば、ここからラストスパートに入る受験生においては3つの重要ポイントがあると考えます。
(1)合格のための戦略×(2)他の受験生を凌駕する努力×(3)時の運=結果としての合格
ここで誤解してはいけないのが、この3つが揃うことは成功の必要条件であって、
十分条件ではないことです。
すなわち、3つがすべて揃っても、
必ず合格する保証があるわけではありません。
一方、3つのうちどれか1つでも欠ければ、
高い確率で失敗します。
正確に言えば、いずれかが欠けている場合、瞬間的にうまくいくことはあっても、長期的に持続可能な成功はあり得ないのです。
受験は、成功の保証がない、大変につらいものです。
努力しても報われないこともあります。
それでも、合格確率を上げるために取り組んでいくしかありません。
そうやって合格したときの喜びは、何ものにも代え難いでしょう。
繰り返しになりますが、「絶対に合格する戦略」すなわち「成功の十分条件」はありません。
しかしながら、「これをやったらほぼ確実に失敗する」、
すなわち「これをやってはいけない」という「DON’T」は存在します。
別の言い方で言い換えると、「踏んではいけない地雷」は存在すると私は思っています。
そして、合格の十分条件は存在しないにせよ、地雷を踏まないことが、
少なくとも「成功の必要条件」となると考えることができます。
受験生は戦略を随時確認してくださいね。
日々刻刻と戦況は変化していくものです。
自分の軍師すなわち先生に相談するのです。
そして、試験会場に入った時に
「自分はラストスパートだけは、ここにいる誰よりも頑張ったんだ」
と思える努力を重ねてください。
そんな挑戦者にこそ勝利の女神は微笑むのでしょうから。