偉さの条件
ロシアの格闘技サンボの元選手・故ビクトル古賀氏をご存じだろうか。
日本人と白系ロシア人のハーフで、
日本にロシアの国技であるサンボを広めた功労者だ。
現役時代、41連戦をすべて一本勝ちという未到の大記録を打ち立てた。
その功績により1975年、西側諸国の人間としては初となるソ連邦功労スポーツマスター、
ソ連邦スポーツ英雄功労賞を受賞。
サンボの神様、無敵の王者としてその名は旧ソ連邦のみならず東欧圏にまで響き渡った。
モスクワのスポーツアカデミーにはビクトルのロシア名、
ビクトル・ニキートヴィチ・ラーバルジンの偉業を称えるレリーフが飾られていて
「史上最も美しいサンボの英雄」との賛辞が添えられている。
しかし彼の母は、いつも語っていた。
〝格闘技で強くなっても偉くはない。
人のために泣いたり笑ったりできる人間こそ偉いんだ〟と。
だから氏は、勝ってもガッツポーズをしない。
破った相手にも〝ありがとう〟と手を差し出した。
年を重ねても、子どものころに身につけた価値観は変わることはなかった。
雑誌や新聞などの取材のときも、謙虚な物腰。
はるか年下の記者との握手に、両手を差し出す。
その自然な振る舞いに、記者は本当の人間の強さを見たという。
誠実に接すれば、誠実が返ってくる。
誠実の積み重ねこそ、人生を美しく豊かに彩る力となる。
人のために泣いたり笑ったりできる人間になってもらいたい。
それらに加えて、
スポーツでも強くなってほしい。
勉強もよくできるようになってほしい。