尽己竢成
2030年冬季五輪・パラリンピック開催を目指す札幌市。
プロモーション委員会の会長代行に就任したのは柔道の山下泰裕氏だった。
現役時代は世界選手権で3連覇、
ロサンゼルス五輪で金メダルに輝き、国民栄誉賞を受賞した。
数々の偉業を打ち立てた氏にも、
深く悔いの残る試合があるという。
それは大学2年時、全日本学生柔道選手権の決勝戦。
最初の1分間、相手は積極的に攻めてきたが次第に守りに入った。
一方で氏は果敢に技を掛け続ける。
試合終盤、”判定で勝てる”と踏んで攻撃の手を緩めた。
しかし結果はまさかの「判定負け」。
試合後、恩師は叱責した。
“お前は相手に負けたんじゃない。自分に負けたんだ!”。
以来、氏は一本勝ちを狙う”攻めの柔道”を貫き、
公式戦で203連勝を達成する。
振り返れば、あの”判定負け”が人生最後の敗北となった。
どんな強敵にも勝る最大の敵は、
自身の心に潜む油断や慢心だろう。
柔道の創始者・嘉納治五郎の言葉に「尽己竢成(じんきしせい)」がある。
「おのれをつくしてなるをまつ」とも読む。
すなわち”全精力を尽くした努力の上で成功を期待すべき”ということだ。
“この辺でいいだろう”という油断は転落の道。
日々、挑戦し、自身の殻を破ろうとし続ける。
勉強でも全く同じだ。
勝利の鉄則である。