米寿
米の字を崩すと八十八と読めることから
八十八歳の長寿の祝いを米寿と呼ぶ。
人間ではないのだけれども、
日本を代表する企業、トヨタ自動車は
豊田自動織機製作所の中で
自動車部が立ち上がってから今年で88年。
人間でいうところの米寿である。
同社の市販車第1号は、よく故障したそうだ。
苦情も殺到し、販売は困難を極めた。
だが販売店の支配人は負けていない。
「我々が 自信をもってユーザーに差し上げることのできるものは、
ただ誠意・誠実・まごころ、それだけだ。
我々は全力をあげて、それを実践する」
営業マン自ら、整備・点検に汗を流した。
整備士と共に故障車のもとへ、昼夜を問わず駆け付けた。
もっといい車を作ってくれれば、苦労しないのに――
こう思って 当然であろう。
だが 彼らは人をあてにしたり、人のせいにはしなかった。
「国産車を育てるのは自分だ」という決意と確信は、
技術者にも 劣らなかった。
誰の胸にも、圧倒的な「当事者意識」があった。
だから、グングンと成長していき、
自動車部門が産声を上げてからわずか26年後の
1959年に、「豊田(豊田市)」へ改称することを市議会で決議し、
本社所在地の表示が「挙母市大字下市場字前山8番地」から
「豊田市トヨタ町1番地」に変更された。
自動車業界は早々の時期からおよそ100年。
100年に一度の大変革の時代に入ったと言われている。
新しい時代を切り開くときは、自分の強い信念が大切だ。
誰かがやるのを期待するのではなく、
自分ができることは、すべてやる。
そんな気概があれば、乗り越えられない壁はない。
これは、自動車産業に限ったことではなく
どんなことにもあてはまるだろうと思う。