努力は噓をつく
東京オリンピックがどうなるのか分からない中、
冬季オリンピックがあと1年だというニュースに少し驚かされた。
夏季オリンピックが延期されているからしっくりこないが、
次回の冬季オリンピック開催地は北京だ。
香港英字紙「サウス・チャイナ・モーニングポスト」では、
フィギュアスケートの五輪連覇王者・羽生結弦を
「フィギュア史に残る偉大な選手」と紹介していた。
羽生選手と言えば、
あるテレビ番組のインタビューで、彼がボードに書いた言葉が印象的だ。
羽生結弦から未来のヒーローへと題したボードに書いた言葉は、
「努力は嘘をつく」
その言葉を、彼はこう説明していた。
「努力が嘘をつかないんだったら、
やっぱり練習量を一番している人が、
毎回毎回優勝できると思う」
厳しいトッププロの世界で戦っているからこその言葉なのだろう。
極限まで努力をして挑んだ戦いで敗れたことも何度も経験しているのだろう。
しかし、彼は努力を否定しているわけではないのだ。
実は先ほどの言葉には続きがある。
「努力は嘘をつく。でも無駄にはならない。」
続けて彼はこう語っていた。
「努力の正解を見つけることが大切」
私たちはアスリートたちの華やかな場面のみを目にしている。
羽生選手はトップアスリートたちの中でも
徹底した努力家の一人だという。
でも、羽生選手は何度も努力に裏切られて失敗を重ねてきたのだろう。
多くの人が、努力をあきらめてしまいたくなるような場面を何度も何度も経験してきたのだろう。
しかし、その失敗に気付いて計画性を持ったときに、
経験した無意味な努力を無駄にするかしないかで人生が大きく分かれる。
羽生選手は続ける。
「だけど、そのウソ自体は無駄ではなく、
そのウソをつかれるからこそもっと違う努力をする、
努力の正解を見つけることが大切。」
受験勉強でいうならば、
たくさん勉強をがんばったとしても、
テストの結果が悪いこともある。
志望校に不合格になることもある。
羽生選手の言う「努力にウソをつかれた」状態だ。
劣等感を感じ、
周りの人とは頭の良さが違うとか、
才能がないとか考えても仕方がない。
勉強自体をあきらめる人もいるのではないだろうか。
でも、それよりも、
自分の努力の方向が間違っていたのではないか、と考えたり
自分の苦手なところはどこなのか、
何が失点につながったのか、
その失点をなくすためにどうすればよいのか、
と結果について分析をして、
次の挑戦に結びつけることが
「努力の正解を見つける」ことになるのではないだろうか。
羽生選手は
「とにかくきつい練習がしたい」
と言うそうだ。
羽生選手はある試合のショートプログラムでミスしたあとのインタビューでこう答えていた。
「とにかく早く練習したいです」
彼の頭の中には、翌日に控えたフリーでの逆転しかなかったのだろう。
人間の寿命も、アスリートの選手生命も昔と比べて格段に伸びてきている。
一度の失敗や成功が生涯ずっと続くことはない。
一度の勝利で人生勝ち続けることはありえないし、
逆に一度負けたからといって勝てない人生もありえない。
昨日の自分を越えていく生き方が
スポーツの世界でも勉強の世界でも大切だと
羽生選手は教えてくれている。
「努力は嘘をつく。でも無駄にはならない。
努力の正解を見つけることが大切」
最年少で国民栄誉賞を受賞するくらい羽生選手はすごい人だ。
彼のようなスケート選手になることはとてもとても難しい。
しかし、彼の考え方をさまざまなことに活かし、
努力の正体をみつけるようにすることで
道をひらいていくことができるはずだ。