ごまかし
二宮尊徳は、要領よく仕事をこなす者より、
“人のために”との心で、
皆が嫌がる仕事にも、懸命に励む者を高く評価した。
尊徳が、荒廃した村の再建を任されていた時のこと。
“信じられないほど多くの仕事をする”男を紹介された。
彼を表彰してはどうかと促された尊徳は、
「私の目の前で働いてみよ」と命じた。
男は偽りを認め、
「監視役員の見ている時だけ懸命に働いた」
と白状した。
どうして、尊徳はごまかしを見破ることができたのか?
それは、彼が村人たちと苦労を共にしていたから。
誰よりも早く畑に出て働き、
最後まで残った。
一人の人間ができる仕事の限界を知っていた。
だから嘘を見抜くことができたのだ。
下積み時代の苦労を否定する意見もある。
苦しい時は、短いに越したことはないと思う人は多いだろう。
特に自らが苦労した人ほどそう思うかもしれない。
しかし、誰よりも苦労をした人は、
誰よりも“現場”を知っているから、
賢明な判断ができる。
「苦労は買ってでもしろ」という言葉が好きだ。
がんばる人はえらい人、
がんばり抜いた人はしあわせな人だと思う。