感謝したもん勝ち
パイロットを夢見る少年が空港を訪れた。
長期休みを利用した“社会科見学”である。
案内役は副操縦士。
鉛筆を手にした豆記者から質問が飛ぶ。
飛行機の重さは?
燃料はどこに積むの?
そして「パイロットになるために大切なことは?」
答えは「勉強も大事。体を鍛えるのも大事。
でも一番大事なのは『親孝行』かな」
メモを取る少年の手が止まった。
父や母は最も身近な存在ゆえ
つい感謝を忘れがち。
だが「当たり前」を「ありがとう」の言葉に置き換えられる心こそ
パイロットに必須の資質だという。
旅客機を飛ばすために
どれほど多くの人が汗を流しているか。
クルーや整備士、貨物や清掃のスタッフ、
営業や旅客担当者……。
「感謝の言葉は心をつなぐ。
みんなの心が一つになって
初めて最高の仕事もできるんだよ」と副操縦士は言った。
ゲーテの至言に
「感謝しなければならぬ人と出あいながら
感謝をわすれていることが
どんなにしばしばだろう」と。
飛行機が人を運ぶ乗り物なら
言葉や声は「思い」を乗せて運ぶもの。
向かう先は相手の「心」だ。
感謝の気持ちも目的地に着いてこそ、である。
最近、つくづく思うことがある。
それは
人生、感謝したもん勝ちだなってことだ。
人に言われても分からないことだし
自分自身分かろうともしなかったけれど
だれもがいつか気付くことだと思う。