CD
私の受験時の話。
直前期、過去問を解いていても
なかなか思うように得点が伸びない。
フラストレーションも頂点に達しようとしていた。
そんなとき
気晴らしに音楽でも聴こう
手に取った1枚のCD。
ユーミンこと松任谷由実さんのアルバム。
しかし
ある曲に差し掛かると
音飛びしてしまう。
何度やっても
何度やっても
ダメだった。
CDラジカセのレンズクリーニングをしたり
CDを磨いてみたり
いろいろやった。
でも、どうしても音飛びして
最後までその曲を聴くことができない。
気がつくと日付はとうに変わっていた。
寝なければいけない。
でも
この曲を聴けないならば
受験もうまくいかないような気分になっていた。
こうなったら意地でもきいてやる。
掃除したり、傾けたり
いろいろと試してみた。
空が明るんできていた。
ついにそのときが来た。
その曲を最後まで聞くことができた。
なぜだか涙があふれてきた。
そして、モヤモヤした気分はすっかりとはれあがっていた。
井上靖は『おろしや国酔夢譚』の中で
江戸末期、大黒屋光太夫の船が嵐に遭い
漂流8カ月の末
はるかアリューシャン列島にたどり着いたことを描いた。
厳冬の地。
こらえ性がなく気弱な者は
次々と倒れていく。
板子をかじっても
なお生きようとする執念がない限り
命を永らえることはできなかった。
生き延びる条件を
作家はもう一つ挙げている。
それは「感動できる心」だ。
夕焼けの美しさに見とれ
ロシアの街に流れる鐘の音に聴きほれる。
豊かな感受性と
ある種のたくましい心の余裕。
それも人生には欠かせまい。
埼玉県公立高校受験まであと2日。
ここまで迫ってくると
多くの受検生は視野が狭くなってくる。
合格する執念と
心の余裕は
正反対に思えるかもしれない。
しかし
私はどちらも同じくらい大事なものだと
あのCDの1件以来確信している。
毎年この時期に聴く
ユーミンのANNIVERSARYに感動しつつ――。