長所も短所も
現存する木造建築で世界最古とされる法隆寺の五重塔。
名もなき匠たちが心血を注いだ技と知恵の結晶だ。
その改修に携わる宮大工の世界には代々伝わる口伝があるという。
その一つが「用材は木を買わず山を買え」だ。
山の中腹以上の木は風雨に当たるので強い。
栄養分が豊かな谷の木は太いが柔らかい。
育った場所まで知らなければ、
真に木を生かして使うことはできないとの意味だ。
また「木組みは木の癖で組め」。
強い風が枝に当たり続ければ、
幹はねじれて「癖」がつく。
癖のある木は厄介だが、
素直な木より強い。
だから右にねじれた部材は、
左にねじれたものと組み合わせれば、
強靭な力が生まれる。
その癖をいかに見抜くかが重要だ。
子どもたちの性格や才能もまた千差万別だ。
型にはめたところで本来の力は出まい。
一人の人をどこまで知ることができるか。
短所を包み込んだ上で、
いかに長所や美点を生かしていけるか。
進路選びや、職業選びも優劣をつけるべきものではない。
そんな価値観を伝えていきたい。
まずは、自分を客観的にみつめること。
長所、短所など自分自身ではわかりにくい所を
生徒面談の場で、誠実の対話から始めたいと思う。