螺旋
「殺し合いの螺旋から、俺は降りる」
宮本武蔵を描いたバガボンドというマンガの1シーンのセリフ。
この場面では、宍戸梅軒が、自分を斬った武蔵に命乞いをする。
頂上を目指し、ひたすら斬りまくる日々を歩んできた梅軒が
ついにどん詰まりに至ったのだ。
こののち、武蔵も吉岡一門との死闘、門弟70人との壮絶な戦いの中で、
技の境地に至るのだが、二度と剣を振るえないかもしれない深手を足に負ってしまう。
そして悟るのだ
自分以外の誰かと比べる強さ。
その道の行く先は
向かい合うすべての人が敵となり
ついには自分だけが生き残る荒涼たる世界だ。
それに気づいた武蔵も殺し合いの螺旋を降りる。
そして、自分の内側から本質につながる道
ほんとうの技の極みに向かって歩き始める。
「天下無双とは、ただの言葉だ」
かつて聞いたこの言葉が真理であることを理解するに至ったのだ。
さて、小中学生の学習の世界では
殺し合いないけれど
競い合いや
目標設定は普通に存在する。
それらは
殺し合いの螺旋と同じ、自分以外の誰かとの競い合いだ。
ランキング表とか数字とかで序列をつくって
自分より上とか下とか判断する。
受験勉強においての短期的な動機付けでは
他人との競い合いは有効だ。
でも、受験が終わったら
そこから「降り」なければいけないのだ。
なぜか。
降りずにいれば
いずれ壁にあたる。
降りずにいる人のほとんどは
そんなとき
実は上を見ようとしない。
自分よりも下を見るのだ。
それでは自己満足しか得ることはできない。
だから、降りる必要があるのだ。