書初め
授業中にふと生徒の手の甲に
書いてある文字が見えた。
「かきぞめ」って書いてある。
宿題を忘れないために書いてあるのだ。
どんな字を書くの?って聞いてみたら、
「えど川」との返事。
結構難しそうだね。
そういえば、
その昔、
一流の書家は良質の墨色を得るために、
あえて子どもに墨をすらせたという。
純粋にして無垢な心の持ち主がすってこそ、
最高の墨色が出ると考えられていた。
えり抜きの硯や固形墨をそろえても、
する人に功名心や俗心があれば、
墨は濁る。
それでは、書き手の卓抜の実力をもってしても、
不本意な作品となってしまう――そう捉えたのだろう。
この生徒は、恐らく、墨をすらずに、墨汁を使うのだろうけれども、
綺麗な字でなくてもいい、
純粋な心でしっかりと書いてほしいと願う。