十人十色
今日は本の紹介。
鈴木正樹著『十人十色の子どもたち』大隅書店
著者は商社勤務を経て教育機関に転職、
不登校や学業不振の背景に
しばしば発達障がいや学習障がいがあることを知り、
そこに特化した学習塾をみずから起業した。
10年にわたる奮闘の中で得た、
個性豊かな子どもたちとの出会いを描く、
珠玉の18のものがたり。
目次は以下の通り。
プロローグ
第1話 学校に行きたいのに行けなかったAくん
第2話 イライラ感が強かったBくん
第3話 進学校から通信制高校に転入したCくん
第4話 集中することが苦手だったDくん
第5話 お母さんとの言い争いが絶えなかったEさん
第6話 気持ちを伝えることで夢に一歩近づいたFさん
第7話 知的障がいのある弟を持つGくん
第8話 校門をくぐることができないHくん
第9話 思ったことをすぐに口に出してしまうIさん
第10話 書くことがトラウマになっていたJくん
第11話 自分に合った勉強方法を見つけたKさん
第12話 勉強する時に気が散ってしまうLくん
第13話 自分の間違いや失敗が許せないMくん
第14話 文字を書くことが苦手なNくん
第15話 家族以外の人とのやりとりが苦手なOさん
第16話 いつもにこにこしているPさん
第17話 頑張りすぎてしんどくなってしまうQさん
第18話 コミュニケーションが苦手だったRくん
エピローグ
全国発達障害者支援センター一覧
この中に、
学校のテストで思うような点数が取れなくなり、
自信を失いかけていた中学3年の女子生徒の話がでてくる。
使っていたテキストは、
カラーのイラストや図表をふんだんに取り入れたものだった。
助言を受け、
教材を白黒の問題集に変えたら、
あれよあれよという間に点数は高いレベルに戻った。
耳で聞いて理解するのは苦手でも、
目で見て覚えるのは得意な人もいれば、
その逆の人もいる。
カラフルな教材を好む子もいれば、
かえって勉強しづらくなる子も。
説明の仕方や内容が
〝分かりやすい〟かどうかには、
「相手にとって」という前提が付く。
このことは
教える側として
まさに肝に銘じておくべきことだ。
〝舎利弗の過ち〟という仏教説話がある。
舎利弗は釈迦の十大弟子の筆頭に挙げられ
智慧第一と称されるほどの人物だ。
その舎利弗が
鍛冶屋に肉体の不浄を観じる修行を教え、
洗濯を仕事とする者に呼吸を整える修行を教えてしまった。
結果、2人は何も得るところがなく、
不信を起こしてしまう。
その後、
仏がそれぞれに逆の修行を教えると、
2人はすぐさま悟りを得ることができたという。
教育や子育てに〝共通のシナリオ〟はない。
相手を思うキモチが知恵を生む。
誠意をもって、成長に力を尽くす励ましの人でありたい。