人生初
くさやって食べたことありますか。
私はこの年になるまで一度も食べたことがなかった。
昔読んだ小説の中で「くさや」なる食べ物が登場したことから
この食べ物を知った。
くさやは、伊豆諸島の特産品として知られている
魚類の干物の一種。
クサヤモロなどの新鮮な魚を
「くさや液」と呼ばれる
独特の匂いや風味をもつ発酵液に浸潤した後で
乾燥させた食品である。
くさやはその昔、
離島の厳しい日々の暮らしの中から生まれたそうだ。
大切な食料であった魚を
より長く保存するために
桶の中の塩水に漬け込んで干し
干物にしていた。
塩や水はとても貴重であったため
一度使った塩水に塩を足しつつ
何度も漬け込みを繰り返すうち
魚の成分から微生物が発生・作用し、塩水が発酵
ついには独特な香りと味をもった「くさや液」が出来上がった。
このくさや液の手入れは
主に女性が日々培ってきた感覚で維持・保存されてきた。
まさに、ぬかみその手入れ。
ぬかみその味がその家の嫁さんの腕で決まるように
くさや液は島の嫁入り道具のひとつになったほど。
また、くさや液は古いものほど良いとされ
二百年以上前から手入れ保存されているものもあるとのこと。
私が読んだ小説には
くさやは独特の
強烈なにおい。
最初は苦しむけれども
慣れてきたら
おいしく感じて
また食べたくなる。
そんな感じで書いてあったと思う。
さて、私にも、くさやデビューの時が来た。
真空パックされていて
この状態ではまったくの無臭。
しかし
パックを開けてみると・・・・・
匂ってきた。
焼いてみる。
相当なにおいが漂ってくる。
昔飼っていたザリガニの水槽、いや公衆トイレ・・・・
とにかくものすごく強烈なにおいである。
味は・・・・・
匂いとともに独特の風味が。
食べているうちに少しずつ慣れてきた。
完食。
これは
子どもにとっての
コーヒーやワサビと同じように
最初は慣れがないから違和感があるけど
慣れたらおいしいってタイプかもしれない。
年を重ねていくうちに
人生初って少なくなっていくものだ。
だからこそ、これからも意識して
人生初に挑戦し続けていきたい。