つづけること、つなぐこと
前作の朝ドラで印象的な場面がある。
関東大震災による火災の中
大量の植物標本を背負った牧野博士に
警察官が、火がうつるから荷を捨てろと言う場面がある。
押し問答の最後に
博士が「この先の世に、残すもんじゃ!」
と叫ぶ。警官はその迫力に引き下がった。
自分の研究のためだけではなく
植物学のための行動に鳥肌が立った。
46・3度──1923年に発生した関東大震災後の東京の気温だ。
正式な記録ではないが
当時の「中央気象台月報」に記述されている。
震災で発生した火災が
台風通過後の強風で急速に燃え広がった。
気象台に火が迫る中
観測員たちは「観測が途絶えること」「記録の焼失」を防ぐため
観測原簿を持ち出して延焼を免れた風力塔で観測を続けた。
その執念によって
震災の被害が大きかった地域は
猛烈な暑さだったという事実が後世に残った。
気象予報士の森田正光氏は
気象関係者の間では
「観測の継続こそが最も重要な任務」
ということが常識となっている、と述べる。
記録の集積は
過去を現在に伝えるだけでなく
未来の建設にもつながる。
文豪・トルストイは
18歳の頃から生涯、日記を書き続けた。
22歳の時には
「日記によって自分自身を判断することはきわめて好都合である」
と記している。
彼は日記を読み返しながら
自分の成長を確認し
明日へ出発する誓いにした。
継続は力である。
「雨垂れ石を穿つ」と言うように。
今日一日ぐらい・・・・・なんて思わないように。