瞬間の背景

船舶のエンジンが故障した。

 

出航の日は迫っている。

 

その日に出航できなければ、

 

船の所有者は大きな損害を受けることになる。

 

船の所有者は大急ぎでメーカーに連絡した。

 

メーカーの技術者は言った。

 

残念ですが、原因が特定できず、修理はできません。

 

お預かりして、分解すると、原因が特定できるでしょう。

 

それから修理するとなると、最低でも1ヵ月かかります。

 

そんなに待てない所有者は、

 

船のエンジンの修理の出来る業者を片っ端からあたってみた。

 

しかし、どの業者も首をかしげるばかりで、

 

原因が特定できない。

 

なすすべもなく、

 

困り果てていると、

 

あるベテラン修理工ならばどうにかしてくれるかもしれない

 

という話を聞いた。

 

藁にもすがる思いで、その修理工に連絡をとり、

 

来てもらうことになった。

 

その修理工は聴診器を使いながら、

 

工具でエンジンをトントン叩いてまわった。

 

半日かけてじっくりと音を聞いたあと、

 

小型のハンマーのような工具を取り出し、

 

ある場所をコンコンと何度かたたいた。

 

「エンジンをかけてみてください」

 

ベテラン修理工は言った。

 

言われたとおりにすると、

 

本当にエンジンがかかった。

 

船は直ったのだった。

 

船主は大喜びした。

 

修理工は荷物をまとめ帰りかけていた。

 

「お礼はいかがいたしましょうか」と聞くと、

 

「後日請求書を送りますから」との返事だった。

 

それから数日後、請求書が届いた。

 

開けて読んでみて船主は驚いた。

 

請求額は1万ドルだった。

 

部品も使わずに、

 

工具で叩いただけの修理代が

 

1万ドルというのは高すぎるのではないかと考えたのだった。

 

そこで、

 

「修理代の明細を教えてほしい」

 

と修理工に依頼した。

 

数日後、明細書が送られてきた。

 

そこには、

 

1.叩く場所の特定調査費用  9999ドル

 

2.叩いて修理した費用     1ドル

 

 

と書いてあった。

 

船主はそれを読んで、何も言えなくなってしまった。

 

彼は思いだしていたのだ。

 

それまで誰一人として

 

故障の原因を究明できなかったことを。

 

修理工がその故障したエンジンを修理できるようになるまでには

 

相当の苦労と経験があったことだろう。

 

簡単に直してしまった場面だけを見て

 

たいしたことはないと思ってしまった船主は

 

自分のことを恥じた。

 

 

 

 

 

感極まって

 

涙がこみあげてくる瞬間がある。

 

一生懸命練習し、苦労すればするほど

 

想いは深くなる。

 

スポーツの試合、

 

音楽の演奏会、

 

習い事の発表会、

 

そして入学試験も。

 

 

本番は一瞬。

 

でも、その瞬間のために

想像を絶する時間を練習に費やしたり、

 

あきらめたくなるような困難を乗り越え、

 

時にはくやし涙を流すこともあったかもしれない。

 

“偉大な瞬間”の背景には、偉大な労苦の積み重ねがあるのだ。

 

 

 

 

 

さて、話は変わって、フランスの歴史が凝縮されているような画像。

 

パリ郊外のフォンテーヌブロー宮殿のナポレオン図書館。

 

ぜひ行ってみたい場所。

画像に含まれている可能性があるもの:座っている人、靴、室内

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