心に刻む
ソクラテスは語った。
文字に頼ると
人は忘れっぽくなる。
「自分の力によって
内から思い出すことを
しないようになるからである」
人は
大事なことを「メモ」に記す。
しかし
それで安心し
読み返すことをしない。
だから
肝心なとき役に立たない。
自らの「心」に刻む。
その努力は
やはりいつの時代にも欠かせまい。
とはいえ、昨今のネット社会は
知りたい情報がすぐ手に入る。
ややもすると“もの知りになった”と錯覚しがちだ。
しかし
ソクラテスは指摘する。
「知者となる代りに
知者であるという
うぬぼれだけが発達するため
つき合いにくい人間となるだろう」
ソクラテスはコンピューターやAIなど知りもしない。
が、知識と人間をめぐる洞察は
数千年を経てもみずみずしい。
この事実こそ
ネット社会の利便性より
よほど感動的ではなかろうか。