どんな時も一歩前進を
ご存じ漫画の神様手塚治虫氏。
その漫画家人生は必ずしもいい時ばかりではなかった。
不遇の時代もあったのだ。
しかも、世間で「漫画の神様」と呼ばれた後でさえも。
不遇を極めた時期の一つは、それまでの“手塚ブーム”が過ぎ去った昭和48年。
自ら設立した会社が倒産した時だ。
作家の大下英治氏は当時、週刊誌の記者として手塚氏を取材した。
失意のコメントを予想したが、
手塚氏は普段通りに熱っぽく
“明日から漫画賞を目指して頑張ります”と語った。
すでに自身の名を冠した賞がある大御所の言葉に、大下氏は驚嘆したという。
“賞を目指す”といっても、手塚氏は、いわゆる名誉栄達を欲した訳ではない。
“漫画の神様”との称賛に甘んじることなく、
常に新しい分野に挑戦し、
読者の支持を得られているかを、厳しく自身に問い続けたのだ。
この後、『ブラック・ジャック』『アドルフに告ぐ』など、氏の代表作が誕生する。
過去の「いい時」を振り返るのは甘美なもの。
苦境の時は、なおさらだ。
苦しい時こそ、挑戦の心、前進の一歩を。
その積み重ねの先に、勝利がある。