極意
納屋が壊れ、途方に暮れた貧しい婦人を、
トルストイは、放っておけなかった。
壁を作り、残るは屋根葺き。
下を見てしまい、目がくらむ。
農夫が助言した
「やっている仕事だけを見るんですよ。
他へ目をやらなければ、
何でもありませんよ。」
トルストイは、人生の「極意が分かった」と喜んだ。
恐れを克服するには、降りかかる迫害や敵意に気を取られず、
目の前の現実に集中することだ、と。
この話に鼓舞された青年がいた。
日本人初のノーベル賞受賞者、
湯川秀樹である。
26歳の年の正月、
彼は日記に綴った。
「あることに専心できれば、
人は自然に伸び伸び成長を続けられる。
一つのまとまった仕事を成就できるだろう。」
中間子論を着想したのは、
この年の秋のことだった。
私たちもまた、
何かをつくろうとする「大工」のようなものである。
何かをさがしている「科学者」でもある。
下を見ると目がくらみ、脇を見ると目を奪われてしまう。
だからこそ、目の前のもの・ことに専念していきたい。
そこにおのずと道は開かれ、
自信もわいてくる。
さて、話題は変わって読書に関する記事の紹介。
スマホよりも本で読んだ方がいいとのこと。