甘やかさない
市販のトマトの糖度は 4~5度程度といわれる。
だが、農業研究家の永田照喜治氏が栽培したトマトの糖度は、
この2~3倍にもなる。
ブドウ並みの19度になったことも。
秘密は「スパルタ農法」にある。
水と肥料を極力少なくし、トマトを“甘やかさない”。
ぎりぎりの環境に置かれたトマトは、
養分や水分を 何とかして吸収しようと、
茎や葉などあらゆるところに
産毛をびっしりと生やす。
その結果、吸収の効率が上がり、
果実においしさが凝縮する。
過剰な栄養が与えられると、
根は十分に働かなくなるという。
満たされ過ぎるとうまく育たないのは、
植物も人間も同じかもしれない。
作家の吉川英治氏が、ある裕福な青年に語ったことがある。
「君は不幸だ。早くから美しいものを見過ぎ、
美味しいものを食べ過ぎていると云う事は
こんな不幸はない。
喜びを喜びとして感じる感受性が薄れて行くと云う事は
青年として気の毒な事だ」
私も恵まれすぎは不幸であり、青春時代の労苦こそ宝だと思う。
だから、時に思い通りにならないことがあっても、腐ってはならない。
努力に努力を重ねる。
その中で、何ものにも動じない人格ができる。
苦労の時こそ、成長と飛躍の好機であるのだと信じたい。