emoji
イギリスの哲学者アンディ・クラークは、
「言語が登場して以来、我々はある意味サイボーグだった」と述べています。
目に見えないし形のない言語はバーチャルな存在だといえます。
バーチャルな世界と現実の物理空間を結びつけるのが身体であるので、
バーチャルとリアルが混在するサイボーグと呼んだのでしょう。
人間は言語の発達において、
情報と身体とが融合する空間を多次元に生みだし、
個人の肉体の限界を超え、
社会という協創の仕組みを発達させてきました。
つまり人間は声を出すことで、身体を他者と共鳴させ共感を育み、
そして文字というメディアを使いこなすことによって、
時間・空間をこえた知識の共有を拡張してきたのです。
多様な学問も、その長年にわたる蓄積の成果なのです。
文字は文字でも、「emoji」は使っていますか。
1999年に日本で開発され、世界各国でも用いられ、
2016年にはニューヨーク近代美術館に永久収蔵されています。
言語学や情報学の真面目な研究対象にもなっています。
emojiはある意味で身体的表現の復権でもあると思うのです。
歴史的にみると、手紙などの手書き文字が廃れ、標準化された活字や印字が中心となり、
文字の書きぶりに気持ちを込める機会が失われていきます。
他方において、サイバー空間では生の感情がぶつかり合う炎上や、
姿も顔も見せないままでのヘイトスピーチや排除の暴力が目立っています。
そのようななかでemojiはいわば感情を表現する「表感文字」であり、
現代の情報技術を使いこなして、情動と身体性を備えた新しい文字を生みだす工夫なのです。
それは、言語本来の触れあいの共感を復活させるものとなるのかもしれません。
emojiの総数は3000字以上!と言われ、常用漢字を超えています。
時が流れ、いつの日か、学校で絵文字を習ったり、
emojiのテストをしたりする日や
emoji検定なんてものも登場する日もくるかもしれません。