万引き家族
余談です。
以前は邦画はほとんど見なかったけれども、最近はけっこう見るようになった。
今回は「万引き家族」の感想。
まず、名前がいただけない。万引きって・・・・・
でも、見終わった直後の素直な感想、ほろ苦くこみあげてくる感動。心が震えた。😢
銀も金も玉も何せむにまされる宝子に及かめやも(山上憶良)
【読み方 しろかねも くがねもたまも なにせむに まされるたから こにしかめやも (やまのうえのおくら)】
〈意味 銀も金も宝石も、どうしてそれらより優れている子ども(という宝)に宝として及ぶだろうか。いや及ぶまい。〉
古今東西、子どもたちこそが一番の宝であり、どんな金銀財宝も及ばない。
何はなくとも愛がある、幸せってそれだけでいいのではないか。
山上憶良の生きた奈良時代だって、何時代だって、本当に大切なことは変わらない。
そして、本当に大切なことは、教えてもらえない。自分で気づかなければいけない。
子どもが親を選ぶ。作中の印象的な言葉だ。
子は親を選べない、普通は。
でも、万引きをする家族が末永く続いてはいけない。
だから、あの終わり方でいいと思う。
子どもたちは、あの家族のメンバーと時間を共有できたこと、絆で結ばれたことで、人生が救われたと思う。
あの濃密な時間が3人の子どもたちのその後の人生にいい影響を与えてくれると信じたい。
一方、万引きなどの犯罪行為、貧困、本当の血のつながりなどが気になって大切なことが伝わらない人も多いだろうなって思った。
その気持ちもわかる。
だから、万引き家族には共感ができないアンチ派も数多いのだろうな。
たとえば、本当に大切なことを伝えたいけれども、どうしても分かってくれない相手に向かって、
「バカ野郎!」とか「ふざけんじゃねえ!」とか怒鳴りながら胸倉をつかみ、伝えようとする。
このやり方でメッセージが伝わるのは、昭和の熱血ドラマが理解できる感覚を持つ人だけ。
多くは言葉遣いや胸倉をつかむという暴力的行為が壁となって、どんないいメッセージでもはじきかえしてしまうから届かないだろう。
女子タイプならまずアウトかな。
塾でも声をかけるときには生徒のタイプによって結構気を使っている。
メッセージ自体が問題ではないのだ。伝え方などそれ以前の前提条件も重要視する人もたくさんいるってことだ。
いや、むしろ前提条件がクリアできなければ、どんな良いものでも門前払いって人はたくさんいるのではないか。
料理動画を見た。ズッキーニの調理法。手軽においしそうな料理方法を実演している。すばらしいなって思いながら、コメントを見ると・・・・・・
肝心の料理じゃなくって、その人のマニキュアの色が黒だったことと指輪をつけたまま料理をしていたことに非難が殺到していた。
そうなのか・・・・・料理動画だって料理の良し悪し以前の前提条件がクリアできていなければ、どんなにおいしい料理を紹介しても評価されないのか。
私の大好きな映画に「レオン」がある。
あまり持たない主義である私の数少ないDVDコレクションの一つだ。
脛に傷を持つ大人と心に傷も持つ子供の再生の物語という点では万引き家族と似たところもある作品。
レオンにマチルダ役で出演のナタリー・ポートマンは今年のインタビューで、
「あの作品は私にキャリアをくれたし、出演は100%ポジティブな経験だった。
あの映画を撮るのは楽しかった。でも今見るとあの作品はとても不適切。
現代の視点で見ると褒められない部分がたくさんある。」
と言っていた。
リメイクできると思う?の問いには、「思わない」とのこと。
ショック!リメイクや続編の期待が・・・・・
曰く、「かつては受け入れられたことでも、今はもう受け入れられないことがたくさんあるわ。
かつて読んだ子ども用の本で『それは言ってはいけないことよ!』と思うものもある」
時代によっても通用することとしないことがあるってこと。
時が流れて、今の時代に通用していることでも通用しなくなっていることがきっとたくさんあるだろう。
そういう部分のアップデートも大切だ。レオンを最初に見たときのあの感動は忘れたくないけれど。