三重丸
泣き虫の少年は、
いつも小学校で、
いじめられていた。
ある日の図画の時間。
画用紙に向かい、
色鉛筆が折れるほど力を入れた。
懸命に描いた絵。
一風変わった絵だったのか、
級友たちはゲラゲラ笑った。
だが先生は盛んに褒め、
赤インキで大きく三重丸を書いてくれた。
“世界のクロサワ”となった映画監督・黒澤明氏の
小学3年生の時の思い出だ。
三重丸で自信をつけた黒澤少年は、
絵を描くのが好きになった。
上手にもなった。
同時に、ほかの教科の成績も、
ぐんぐん上がった。
彼を理解する一人の先生の存在が、
可能性の芽を急速に伸ばした。
周りから評価されなくても、
たった一人でも側で見守り、
たたえてくれる人がいれば、
人は自分の可能性を信じることができる。
一つの自信が挑戦の心を育み、
大きな使命の花を咲かせる。