ワイルド・ダックス

デンマークのジーランド地方の
古城を映す湖には
毎年鴨が飛んでくる。

そこには餌をいつも用意して
待っていた老人がいた。
いつしか鴨たちは
食べ物に恵まれて
次の湖へ飛び立つ必要がないと思い、
そこに住み着いてしまった。

しかしある年、
その老人が死んだ。
餌をもらえない鴨たちは、
自分で餌をさがし、
次の湖へ飛び立たねばならない。
しかし飛べない。
なぜなら、
野生を無くしてしまった鴨たちは、
まるでアヒルのように肥え
はばたいても
飛べなくなっていたのだ。
あの何千キロにもわたって飛べる鴨が…
そして、そのとき
春の雪解けの濁流が
湖に流れこんできた。

なすすべもなく

押しながされてしまった鴨たちは
全部死に絶えてしまった。

コメントを残す

いい話

前の記事

4度の受験失敗の先には
雑感

次の記事

ゆけばわかるさ