初心
塾業界では3月から新年度がはじまるのが一般的だ。
あと1ヵ月で新年度が始まる。
「初心忘るべからず」という言葉が心に浮かんだ。
能の大成者・世阿弥がこの言葉を書き残したのは、
還暦を過ぎてからだった。
室町幕府の3代将軍・足利義満に寵愛されたが、
6代・義教の代になると数々の弾圧を受け、
能の秘伝書を若い甥に譲るよう強要される。
それでも世阿弥は、
枯れゆくことを拒み、
ひたすらに己の道の完成を目指すのである。
「初心」というと、
現代では専ら、
“芸能や学問を始めたころの気持ち”という意味だが、
世阿弥は『花鏡』で、
初心には、ほかに二つあると述べた。
一つは、修行のそれぞれの段階の初心、
もう一つが「老後の初心」である。
つまり「初心に帰る」とは、
ただ過去を振り返ることではない。
視線を未来に向け、さらなる成長へ、
誓願を立てることだろう。
ゲーテも言っている。
「誰が自分自身を知ろう、
自分の能力を誰が知ろう。
勇気ある人はやれるだけやってみるのだ」