退塾生

電話が鳴った。

 

「はい、辻本塾です。」

 

「〇〇です」

 

久しぶりというよりも

 

聴きなれない声だった。

 

なぜならば、私が知っている声は

 

声変わりの終わる前の声だったからだろう。

 

「合格しました!」

 

感情のためか声が少し上ずっている。

 

「おめでとう」

 

反射的に返事をしたけれど

 

その生徒の志望校からすると

 

合格発表はまだ先のはずだけど・・・

 

「どこに受かったと思いますか?」

 

この時期だから2択だけれども

 

どちらか分からない。

 

正直に分からないと言うと

 

「〇〇です」

 

すごいじゃないか

 

がんばったね。

 

「先生に一番に報告したいと思って」

 

誇張だとしても

 

そのことばはとてもうれしい。

 

 

 

 

実はその生徒はうちの塾を退塾している。

 

退塾生本人からこのような合格の連絡を受けるのは初めてだ。

 

本当にとてもうれしい。

 

うちの塾の合格実績ではないけれど

 

私の心の中では

 

その生徒のことを誇らしく思っていこう。

 

「大学進学のときも連絡をしてね」

 

それを約束して電話を切った。

 

少し早いけれど

 

私の心の中で

 

合格発表のときのあの独特の感覚が沸き起こってきた。

 

 

 

 

 

今日は冬至だ。

 

明日からは少しずつ日も長くなっていき

 

春に向かっていく。

 

残された時間を大切にしていこう。

 

がんばろう、受験生たち。

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