心の扉
心には「扉」がある。
それを開かなければ、言葉は相手に届かない。
満員の最終電車。
ドアの前に若者たちが座り込み、騒いでいる。
乗客の一人が、にこやかに「ちょっとごめんね。降りるよ!」と声をかけた。
びっくりしたように見上げ
身を寄せる若者たち。
降りしな客は「おやすみ!」と。
彼らはほおを赤らめ、立ち上がった。
その光景を目にして思った。
もし客が、不機嫌な顔つきで
「邪魔だ。どけよ!」
と告げたとしたら……
ひと悶着起きたかもしれない。
理由はどうあれ
「不機嫌は怠惰の一種」とはゲーテの指摘。
正論といえども“伝え方”には、やはり配慮が欠かせまい。
「勉強しなさい!」
「授業開始時にはテキストとノートを机の上に!」
などなど、思い起こせば無数の問題ある伝え方が浮かぶ。
心の「扉」を開く鍵は
快活な誠意と勇気だ。
そのとき言葉は心に届き、相手は動く。