達人
計算の達人という問題集がある。
その名の通り数学の計算問題に特化していて
繰り返し学習することで効果が得られる。
私はこのネーミングがとても気に入っている。
計算の名人よりも計算の達人の方が
しっくりくると思う。
達人という言葉は
武芸や学問において
ふつうの人が入れない境地に「達した人」を指す。
中国の古典、春秋左伝では孔子を達人の例として挙げている。
一方、名人は「他人よりも優れている人」を指す。
鎌倉時代から使われ始めたと言われている。
一定の規範やルールの中で実力上位の人だ。
つまり
名人になるには
競争に勝つことが必要なのだ。
しかし
達人になるには
自分の努力、精進だけで大丈夫だ。
私は生徒たちに
努力の達人になってもらいたいと思っている。
たしかに、受験は競争だ。
合格点を取らなければ志望校に入れない。
でも
本当に向き合うべきなのは自分自身なのではないか。
弱い自分自身に打ち克ってこそ達する境地があるのではないか。
たとえば、おいしい料理を食べて
知識をひけらかしてばかりいるような人には
興ざめしてしまうだろう。
「料理の分野では、彼より私のほうが達人だ」と言ってしまったら
その人はもはや「達人」とは言えないだろう。
ただ楽しんで、楽しい気持ちになる。
おいしい料理が目の前にあれば
その瞬間を精一杯味わい尽くすことが大切だ。
その先に達人の道がある
学問の世界もまったく同じなのだと私は思う。