夏の一書を
今から約140年前
自由民権運動の旗手の一人板垣退助がフランスで尋ねた。
「日本のような後進国の国民に
広く自由民権の思想を普及するには
どうしたらいいでしょう」
「それは適当な小説を読ませるのが一番」
こう語ったのは、晩年の文豪ビクトル・ユゴー。
板垣がこの発言に面食らっていると
自身最後の小説『九十三年』を薦めたという。
板垣が帰国した時
船荷には西洋の小説が大量に積まれていた。
ユゴーは政治家でもあった。
貧困の克服、教育権の独立、自由民権の擁護などのため
火を吐くような言論をもって戦った。
しかし、ナポレオン3世と政治的に対立し
約19年間の亡命生活を強いられる。
この間、『レ・ミゼラブル』など代表作の大半が生まれ
『九十三年』の構想も練られた。
革命期の混乱する社会を舞台に
人間愛の精神を高らかにうたい上げた『九十三年』。
古今東西、人は智慧を磨かなければならない。
だれかにそれを任せてはいけない。
ペンは剣よりも強し。
8月前半が終了。
魂を揺さぶる夏の一書を見つけたい。