基本を徹底的に
ドイツの著名なクラリネット奏者の指導に、
だれもが興味津々だった。
相手は楽器を持って3カ月という、
日本の中学生である。
彼が生徒に課したのは音階練習。
野球で言えば、
素振りやキャッチボールにあたる地味な練習だ。
その際、
こう教えた。
「何の考えもなく、
ただ音を出すという瞬間を
君の人生に作ってはいけない。
たとえ音階練習であっても、
そこに音楽があると信じ、
音楽を作りなさい」
初々しい生徒の、
必死な姿が目に浮かぶ。
彼が伝えたかったのは、
基本の練習にも
常に全力で取り組む姿勢であろう。
基本の大切さを知り、
徹し切れるか。
そこに一流へと至る道がある。
地道な努力で決まる。
分かっていることと片付けがちだが、
どんな分野であれ、
ひとかどの人物になるには、
この“法則”から逃れることはできないのだ。
努力の達人に、
開けない道はない。