話芸
以前も書いたが、
私はオーディブルという
本の朗読サービスを利用している。
このサービスで月に数冊の本を「聞いて」いる。
ここ最近では、
太田愛さんの「幻夏」、宮本輝さんの「蛍川」、
工藤雄一さんの「麹町中学校長が教える子どもが生きる力をつけるために親ができること」
松浦壮さんの「時間とは何だろう」
を聞いた。
車通勤の車内で聞いているので、
こんなペースなのだが、
朗読もいいなあって思う。
ただ、読み手の技量によって
作品ごとに結構な違いが生まれてしまうのも事実である。
かつて映画が無声だった頃、
日本の映画館には映像に合わせて
場面の状況などを名調子で語る「活動弁士」がいた。
その第一人者の一人が、徳川夢声氏である。
後にラジオ番組「宮本武蔵」の朗読でも人気を博し、
“話芸の達人”として名をはせた氏が
「話の目的」を三つに分けて紹介している。
すなわち
①意志を伝える
②感情を伝える
③知識を伝える、である。
これは、私たちの日常の中でも使える大切なアドバイスだ。
例えば、私の仕事の場合、
授業を通して
③の知識を伝えるのだが、
それだけでは不十分だ。
「キミを伸ばしてあげたい」という意志も伝え、
「私も伸びたい」という意志を引き出すこと。
これはとても大事なことだ。
意志なきところに道は開けないから。
さらに、
授業を通して
学習は楽しいという感情も味わってもらわなければ、
長くは続かない。
楽しさと厳しさの両立の中の何とも言えないよろこびを
味わうことができるのならば
これから先も大丈夫だろう。
声に出すことは大事なことだ。
ココロの中でとどめておいても
相手には伝わらない。
どんどんと声に出していくべきだ。
そして、
同じ声に出すのならば
そこに①意志 ②感情 ③知識
の3つを込めてみるのがいいと思う。
例えば、
2人の先生がいて、
全く同じ授業のシナリオを
一言一句同じセリフで
授業をしたとする。
生徒たちの受け止め方や
定着度は
全くちがうものであろう。
それは③の知識だけが同じであっても、
残り2つの要素が別であるからだ。
先生の仕事に限った話ではない。
声を出す場面すべてにおいて言えることなのだと思う。