目印

江戸に遊びに来ていた商人が、お供に言った。

 

「これから、あちこち見物に行く。

 

この辺りは同じような建物が多い。

 

宿屋の目印を覚えておくように」

 

「へえ、分かりました」

 

一日中、江戸の町を歩き回った後、

 

帰ろうとしたが、

 

はて、宿屋がなかなか見つからない。

 

心配になった商人が、

 

お供に聞いた。

 

「いったい何を目印にしてたんだい?」

 

「へえ、屋根にカラスが2羽、

 

止まってたはずなんですが」

 

落語の小ばなしの一つである。

 

 

 

状況が変化してしまう、

 

頼りにならないものを目印にすれば、

 

目的地にたどり着くことはできない

 

笑いの中にも、実に味わい深い示唆がある

 

 

人は環境や周囲の意見、

 

また自分の感情に振り回されがちなもの。

 

ただ、世間の評判は目まぐるしく変化するものであり、

 

人の心ほど移ろいやすいものもない。

 

自ら決めた道を迷わず歩み通すには、

 

何ものにも揺るがない

 

「不動の指標」を持つことが不可欠である。

 

 

 

 

うちの塾に通う中3の受験生で、

 

1学期成績が思うように振るわなかった生徒がいる。

 

先日、3者面談も実施した。

 

それから2週間。

 

塾に来た時、すぐに変化に気が付いた。

 

見苦しかった髪の毛がさっぱりとしているではないか。

 

話をしていると、

 

「スマホ、解約しました」と。

 

あれだけ、依存症のように手放せなかったスマホ。

 

本気だ。

 

スマホがないと、禁断症状も出るだろう。

 

その葛藤こそが忘れられない「不動の指標」になる。

 

道は必ず開けていく。

 

応援しているよ。

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