善を為す
86年前の11月9日の夜
ドイツ全土でシナゴーグと呼ばれるユダヤ教の会堂や
ユダヤ人の商店などが焼き払われた。
ナチスによる弾圧である。
街にガラスの破片が散乱したことから
その迫害は「水晶の夜」と呼ばれる。
ユダヤ人虐殺(ホロコースト)の実行責任者だったアドルフ・アイヒマン。
戦後の裁判で彼が主張したのは”「命令」に忠実に従っただけ”ということ。
何百万人もの命を奪った男が裁判で見せたのは
自分の頭で善悪を判断しない姿だった
裁判を傍聴した哲学者ハンナ・アーレントは
その思考の欠如に衝撃を受け
こう指摘している。
「善を為すとも悪を為すとも決めることのできない人間が
最大の悪を為すのです」
凄惨な歴史を繰り返さないために
ホロコーストから学ぶべき教訓は数多くある。
その一つが
自身の生き方を問うことを忘れ
「善を為す」という勇気を失った時
私たちは人間の生存を奪う悪にさえ加担しかねない
ということだ。