毎年が一年生
コンピューター修理の仕事から一転
苦労を重ねて杜氏となった方がいる。
全国新酒鑑評会で、何度も金賞に輝く。
その方が、背筋を伸ばし
自らに言い聞かせるように語った言葉は
「酒造りは毎年が1年生です」
日本酒は
米の出来ひとつ
水のおいしさひとつ
酵母の状態ひとつで味が変わる。
「毎年が1年生」というひと言に
現状に甘んじることを許されない
酒造りの厳しさが、にじんだ。
人生の大きな山を乗り越えた時
喜びの余韻に浸りたいのが人情。
だが、それが油断となり
次の敗因となる場合がある。
ナポレオンが
イタリア遠征で連戦連勝した時のことを
こう振り返っている。
当時は得意満面だったでしょうと聞く随員に
「なんの、それどころか!」
「一戦済めば
はや、その日の勝利のことなど忽ち忘れてしまって
明日の勝利を如何に導くべきかに没頭していた」と。
生まれ変わった決意で
新年へ出発したい。
我らの心は、どこまでも勇猛精進である。