未完成
「吾、十有五にして学に志す。
三十にして立つ。
四十にして惑わず……」
有名な孔子の人生である。
しかし
これを裏から読むと面白い光景が見えてくる。
つまり
あの孔子でさえ
十四歳までは学問に志さなかった。
二十九歳までは自立できなかった。
三十九歳までは惑いっぱなしだった……。
孔子の偉大さは「常に自分の弱点を自覚し
それを克服しようと努力し続けた」点にあるのでは。
人間はいくつになっても未完成。
孔子も、そうだったのだ。
六十歳近くまでは
他人の忠告を素直に聴けず
七十歳近くまでは欲望のままに振る舞うと
周りに迷惑をかけてしまった
というのだから。
とはいえ、彼の生涯を一貫して彩るものは
学問に発憤しては食事も忘れ
道を楽しんでは心配事も忘れ
「老いの将に至らんとするを知らざるのみ
(やがて老いがやってくることにも気づかずにいる)」
というほどの
ひたむきな歩みであった。
「きのうの自分」より
一歩前進の「きょうの自分」を。