折れない心
大人にとってはたいしたことでないように思えることでも子どもたちには「壁」であることはたくさんあります。
逆上がりをすること、プールで泳ぐこと、友だち関係、そして受験・・・などなど。
大人だって壁を持っています。生きている以上はたくさんの壁がいたるところにあるものです。人生は壁の連続であると言えるでしょう。
ところで「壁」ってなんでしょうか。
魚になりたいけれど、なるための壁が突破できない、なんていう人はいません。
完全に不可能なことは「壁」となりません。
「心の壁」「記録の壁」「言葉の壁」「鉄壁のゴールキーパー」など「壁」とは、乗り越えられるもの、乗り越えるべきものだと言えます。
小さい頃の壁を思い出してみてください。
私は「水泳」という壁が印象強く残っています。
水が嫌いでした。
親の目を盗んで体温計をこすってプールをさぼったこともありました。
恐る恐る入ったプール、目を開けることから始め、コースの半分まで泳げるようになり、ついに25メートル泳ぐことができました!
皆さんも似たような経験があるはずです。
エベレストなどの高い山に登ろうとする人は、最初は低い山から、徐々に高い山を踏破していくといいます。
どんな壁にも、それを越えるための技術は必要です。
しかし、ひとつの壁を越えた人間は、その経験を他のことにも使えると私は確信しています。
だからこそ、あきらめずに壁の高さを徐々に上げていけば、エベレストの頂だって踏みしめることができるのですね。
今、目の前にある壁は種類が違うかもしれないけれども、それを乗り越えるための経験と自信はすでに自分の中にあるのです。
壁を越えるための技術は1回きりが多いのですが、壁を乗り越えるときの「折れない心」は生涯残るものなのです。
それでも、勉強と水泳や登山は違う、と言われるかもしれません。
でもまずは「基本を体で思えるまでやる」こと、勉強ならば脳が覚え、条件反射できるレベルまでやる。
根気がいることですが、これに勝るものはないと断言します。
途方もなく高い目標だって、冷静に向かい合い、それに焦点を合わせていくと、道が見えてきます。
一番大切なのはハートだけはどんなときも折らないように続けていくこと。
一時だけ成績を上げるならば、意外と簡単にできます。
難しいのはそれを持続することなのです。
私の教えている英語では「現在完了形」という時制があります。
簡単に言うと「過去形+現在形=現在完了形」です。
一つの文で、過去のことも現在のことも両方表すことができます。
過去が今現在につながっている、まさに人生は現在完了ではないでしょうか。
過去が現在を作る、つまり未来から見れば今現在がまだ見ぬ未来を作るわけです。
今現在ぶつかっている壁の痛みが遠い未来への糧になるならば、苦労を買ってでも経験するべきです。
壁を乗り越えていく経験をどんどんするべきです。
私自身は抱えきれないほどのコンプレックスを持ち、今も壁を越えようともがいています。
学生時代にアルバイトで家庭教師、塾講師をやっていて、当時それしか「売り」を持っていなかった、だから、とりあえずやってみたという感じです。
けれど、社会人として初めて立った教壇の前にいたのは、懸命に壁を乗り越えようとしていた子どもたちでした。
子どもたちは、当時の私自身だったのです。
そう気づいたとき、私は目の前の壁を何とか乗り越えてほしい、そして、これから何度もぶつかるであろう壁を乗り越える原点を作ってほしいと強烈に思いました。
すると、私自身、やっていることがとても楽しくなりました。
子どもたちのためにやっていることが、逆に私を変えていったのです。今ではこの仕事を天職だと思っています。
「あの泥だらけのスニーカーじゃ追い越せないのは、電車でも時間でもなく、僕かもしれない・・・」という歌がありましたね。
心が折れかけているのでしょう。でも、スニーカーの泥を落としてみれば、きっと追い越せる!という気持ちが芽生えるはずです。
スニーカーの泥を落として、新たな気持ちでいきましょう。