学歴と賃金
大学の定義は国ごとに異なっており、
大卒が意味する内容も国によって違う。
ユネスコの定義でみると、
2018年の日本の大学進学率は63.58%(45位)
韓国94.34%(5位)、アメリカ88.17%(11位)などと比べても
決して国際的に高い数字とは言えない。
https://www.globalnote.jp/post-1465.html
大卒と高卒では何が違うのだろうか。
多くの人は「賃金」と答えるのではないだろうか。
そして、身近な人や聞いたことのある話を思い浮かべるだろう。
ある人は、大卒で高収入の人を思い浮かべ、その通りだと思うだろう。
ある人は、高卒で立派なマイホームに住み、豊かな生活を送る人を思い浮かべ、
学歴は関係ないと思うだろう。
このように、学歴による賃金格差に関しての議論には「正解」がない。
こうした正解のない議論は、他のことについても起こり得る。
例えば、近所の先輩の成功談を聞いて塾や学校に入ってみたけれど、
実際には思ったような成果が上がらなかったという類の話は結構あるのではないだろうか。
学歴と賃金のように、関連性があるといわれているものを考える場合、大切なことがある。
2つの間に「因果関係」があるかどうかということだ。
「大卒だから賃金が高い」、別の言い方をすれば、
「大学に行きさえすれば(全く勉強しなくても)高い賃金を得ることができる」のであれば、
学歴と賃金の関係は「因果関係」だといえるが、実際はそうではないことは明白だ。
教育経済学者の中室牧子氏によると、大卒と高卒の平均生涯獲得賃金の差はおよそ1億円とのことだ。
一億円といえば、相当な金額だ。
この話を聞くと、大卒に魅力を感じる。
ただし、保有資産額が2000億円を超えるzozotownの創業者は高卒だ、などと反論が出てくるかもしれない。
大卒でない成功者はまだまだ多数いるのだから、議論は白熱するだろう。
このような「学歴と賃金の関係はなんらかの関係があるけれども、原因と結果の関係にはない」
というものを、「因果関係」と区別して「相関関係」と言う。
この意味では、学歴と賃金の関係は「因果関係」ではなく、「相関関係」といえるだろう。
「因果関係」とは異なり、単なる「相関関係」の場合、学歴だけをつけても、賃金が上がるというわけではない。
ここを誤解している人は多いと思う。
誤解していなくとも、子どもにうまく伝えられない人も多いと思う。
親や教師が子どもの将来の賃金を上げるために意味のあることをしようと思うならば、
何が子どもの将来の賃金との間に「因果関係」があるかを知ることが一番の近道だと思う。
単なる「相関関係」に過ぎないことを、「因果関係」があるかのように誤解して、
子どもの学歴だけをつけても賃金は上がらないのだ。
だから、一見関係があるように見えることではなく、
確かに「因果関係」があることとは何かを知ること。これが重要だ。
個人の体験に基づいた見解は、「相関関係」と「因果関係」の違いを意識しておらず、
時々、「相関関係」に過ぎないものを「因果関係」であるかのように誤解している人もいる。
教育や人生において、確かな「因果関係」を見つけ出すことはたやすいことではない。
だから、「相関関係」と「因果関係」は別のものだということを理解しているだけでも、
人生において役に立っていくことだと思う。
高齢者の世代では、学歴と賃金との間に「因果関係」に近いものがあったのかもしれない。
進学の話をしていても、「大学に行った方がいい」と
歯切れよく確信を持って話される方が多い。
一方で、小中学生の親世代は多様な価値観がある。
バブル崩壊後、失われた〇〇年と言われ続けた時代を生きてきたからだろう。
大学を卒業しても就職できなかったり、
一流企業に就職しても、経営が傾いたり、倒産することも。
中には大学を卒業して、順調な生活を送っている人もいるだろう。
だから、価値観も様々だろう。
もちろん、教育の目的は学歴や収入や職業だけではない。
それに、子どもたちの人生の主役は子どもたち自身であり、
今後の人生のさまざまな出来事や出会いの中で自分だけの道を進んでいくものだ。
しかしいずれにせよ、遠い未来のことを子どもたちが自ら想像するのは難しいことだ。
私たち大人の重要な役割として、
幸福な人生と因果関係にあるのは何なのかをいっしょに考えていくことが挙げられるのではないだろうか。