初心
真新しい制服やスーツに身を包んだ若者が
街を行き交う。
「初心忘るべからず」という言葉が心に浮かんだ。
能の大成者・世阿弥が
この言葉を書き残したのは
還暦を過ぎてからだった。
室町幕府の3代将軍・足利義満に寵愛されたが
6代・義教の代になると
数々の弾圧を受け
能の秘伝書を
若い甥に譲るよう強要される。
それでも世阿弥は
枯れゆくことを拒み
ひたすらに己の道の完成を目指すのである。
「初心」というと
現代では専ら
“何かを始めたころの気持ち”
という意味だが
世阿弥は『花鏡』で
人生の中にいくつもの初心がある述べた。
だから
「初心に帰る」とは
ただ過去を振り返ることではない。
視線を未来に向け
さらなる成長へ
誓願を立てることだろう。
ゲーテも言っている。
「誰が自分自身を知ろう
自分の能力を誰が知ろう。
勇気ある人はやれるだけやってみるのだ」