公立中に進学するメリット
公立の中学校に通うことの良い点は大きく3つあります。一つは、「地域と密着している」こと。私立中に行くと、地域に同級の友達がいなくなってしまいます。放課後は、同じ私立学校の友人と学校帰りに一緒にどこかへ行くことはできても、休日は難しい。小学校の同級生が近所にいるといっても、中学で進路が分かれてしまうとなかなか誘いにくくなります。公立に通う子は毎日学校で顔を合わせる者同士の気安さで、「今日は○○くん家に行こう!」などと、にぎやかに楽しむことができます。
2つ目は、「高校で好きな進路を選べる」こと。中高一貫校に進学したものの、高校で公立や他の私立高校に行きたいと心境が変わった場合、継続して通いながら公立を受けることはできません。一度合格した学校を辞めるのは覚悟がいりますし、一貫校は高校の受験対策はしませんから、「公立や他の私立に行きたい」という選択を取ることが難しくなります。
3つ目は、なんといっても「多様性が担保されている」こと。家庭の経済状態をよりどころにせず、さまざまな環境で育った子どもが集まり、共に学ぶことができる。その素晴らしさは、公立ならではです。本当にいろいろな家庭の子が通ってきています。
以前、うちの学校に家庭の月収が4000万円あるという子どもが通っていました。年収ではなく、「月収」ですよ。進学した私立学校が合わずに桜丘中に転校してきたということでした。そして、その子の隣の席は、母子家庭の子で、母親が仕事をいくつか掛け持ちして生計を立てている家庭の子どもでした。
校則撤廃、制服は着ても着なくてもいい。スマホもタブレットもPCも持ち込み自由(Wi-Fi完備)。授業中は出入り自由で自習できるフリースペースも。定期テストなし。チャイムも鳴らない――。そんな自由な校風で全国的に注目されている公立中学校があります。小田急線経堂駅から徒歩10分強の住宅街にある、東京都の世田谷区立桜丘中学校です。上記は2010年に赴任して一大改革を行った西郷孝彦校長先生より。