一から始める
稲作に携わって半世紀という方に
「大ベテランですね」と声をかけると
首を横に振って仰った。
「いやいや、50年は長い年月でも、
言ってみれば米作りを50回しか経験していない」
田植えも稲刈りも農作業をやるべき季節は
毎年やって来る。
だが、自然環境や社会情勢が同じ年などない。
田んぼで目にするのは、
田起こし、
田植え、
収穫などの作業だが、
米作りは種もみを選別するような、
真剣勝負の“陰の仕事”も多い。
一つ一つ、
どれも手を抜いては実りの時は来ない。
米作りも、塾での指導も同じだ。
何十年塾講師をやったといっても
その年数分しか
通年の指導を経験していない。
しかも、同じ生徒など存在はしないからだ。
ましてや、経験に胡坐をかこうものなら
成績を上げることなど不可能だ。
これが私がベテランという言葉があまり好きでない理由だ。
一年が終わろうとしている。
新しい一年が近づいてきている。
新たな気持ちで
一から始めていきたい。