数字
生徒面談を実施中だ。
時々こんなことを言う生徒がいる。
「最低でも○○高校に入りたいです」
この○○高校は、たいていの場合、
偏差値〇〇のという言葉が前に省略されている。
もちろん、その気持ちも十分理解できるのだが、
こういう考え方には危険なものがあるように思う。
その考え方を
職業に言い換えてみればこんな感じ。
「最低でも年収2000万円は稼ぎたいです」
と言っている就職活動中の大学生。
念願かなえて就職し、
血のにじむような努力と徹夜を重ね、
激烈な競争を勝ち抜いて、
ようやく年収1000万円の勝ち組になったぞ!と思っていたら、
価値観が同じ奥さんに「本当にあなたってダメな男ね」
「○○さんのお宅は年収2000万円、
××さんのお宅に至っては年収5000万円なのよ!
それなのに、あなたは……」なんてため息をつかれる。
私の今までの指導経験上、第1志望校でなくとも、振り返ってみると、
合格した学校が実は一番良い選択だったなんてことはよくある。
運命を信じるわけではないのだが、
何かその学校との縁とでもいうべきものがあるのかもしれない。
いや、どんな選択をも良縁と思えるほどの良い意味での「思い込み」が
結果として成功を導いているのかもしれない。
どの学校でも、数字に表れる成績以外にも大切なことを教えてくれる。
今いる場所で大きく成長するぞと覚悟を決めている生徒は
それを素直に受け止めることができる。
結果、大切な価値観を学ぶことができるだけでなく、
成績だって大きく伸びる。
大切な価値観とは、
自分ひとりが幸せになっても意味がない。
それぞれの得意・個性を生かしながら互いに助けあって成長していくという精神のことだ。
SDGsなどで具体化されている今世界で共有するべき価値観だ。
さらに、人生百年時代、
人は相当な長い期間をかけて学び、そして成長していく。
数字だけにとらわれていると、
たとえ偏差値の高い第1志望校に合格できたとしても
周囲がハイレベルなので、
成績下位に位置してしまい、
負け癖がついてしまい、
結果大学受験も不首尾に終わることもある。
数字だけが価値観の基準なので
人生において大事な価値観などは重要視せずに
せっかくの貴重な機会があったとしても
自分の中に取り込むことができずに卒業してしまう。
反面、合格した学校では、
数字だけにとらわれず、
今いる場所でできることをしっかりと取り組めたため、
大学受験でも大きな花を咲かせた。
そんなケースもたくさんある。
要するに、「塞翁が馬」なのだ。